いつも店舗でのお仕事、お疲れ様です。
業務マニュアルを作成を前に、どのように書けばいいのだろう?とお悩みではありませんか?以前の私も「いやいや、マニュアル作ってる暇なんてないよ」と思っている期間がかなりありました。異業種からの転職で日々やるべきことに追われていっぱいいっぱいだったのでなおさらです。
しかしながら、レジミスに対応する時間(違算の調査やお客様への対応に費やす時間)を積み上げて考えてみると、マニュアルを作ってミスを未然に防ぐ方が時間がかからないんじゃないか?と気付いたことがあります。
それはあるスタッフさんが、同じミスを同じ手順で2日連続で行ってしまったことがありました。お客様にご連絡を差し上げ、手続き方法を一緒に進めて、再発防止策を一緒に考え、商業施設に報告を行い、顛末書を書いて・・・。とにかく2倍の時間が掛かりました。
そこで気づいたのです。これは本人の問題ではなく、教える側に問題がある。。。
マニュアルを作成する時間がない店舗マネージャーさんはこの記事をぜひご参照ください。この記事を読むと業務マニュアルの作成に最初の一歩が踏み出せます。ネット上ではマニュアル作成方法はたくさんありますが、ポイントカードの説明やPOSレジの機能に違いがあるせいか、具体的なレジの流れを記載したものがありません。
この記事では、レジ業務は抽象化すると、商品のバーコード入力→レジへの金額入力→支払い→レシート発行に整理が出来るため、その流れに沿って「業務フロー」を記載しています。また、細かい業務は「業務手順」として紹介しており、それぞれの注意点を記載しています。
この記事を読み終えると、レジミス撲滅に向けた業務マニュアルの土台ができます。
そして業務マニュアルが完成すれば、レジミスにより奪われる時間を縮小でき、我々 店舗マネージャーがより大切なことに時間を使うことができます。
前提となる業務フローと業務手順について
この作成事例は、業務フローと業務手順に分かれています。
(こちらのPDFはフリー素材として提供しておりますが、テンプレートを運用・使用した結果生じるあらゆる影響につき、一切の責任を負いかねますので予めご了承ください)
業務フローは、レジを終えるまでの普遍的な流れです。
レジのマニュアルはお客様とのお金やクレジットカードのやり取りとなり大きくは変わらないと考えており、その普遍的流れを「業務フロー」と表現しました。
一方で業務手順は、その業務フローをどのような手順でやるかを詳細に記載しています。
業務手順のやり方を守るか逸脱するかで、未然にミスを防げるかそれともミスをしてしまうかが変わってくると考えています。
過去の自身のミスからの経験も含めて、業務手順の詳細も記載していますので少しでもお役に立てれば幸いです。
具体的なレジマニュアルのテンプレート(クレジットカード編)
ここからは、レジットカードでのお会計の業務マニュアルを紹介していきます。
商品のバーコード読み取り
カルトン置く
レジ台にカルトンを置きます。
すべてはここから始まります。カルトンが固定されているタイプのレジ台以外は、カルトンを出したままにしないほうが良いです。
最後の工程で「レジの上に何もない状態にする」というのがありますので、レジ台の上には何もない状態が望ましいです。
バーコード読み込み
商品のバーコードを読み込みます。
お客様に口頭で金額を伝えます。この時に「(商品名)+(金額)」を口頭でお客様にお伝えします。
金額お伝え
お客様と一緒に金額の表示を確認します。
カスタマーディスプレイ(金額表示器)があればそれを手で指し示します。
画像の事例なら
「ユニセックススウェット 19,800円」+「ニットキャップ 3,080円」、「合計2点で22,880円」です
と、タブレット端末の表示画面を指差し確認を行いながら、声に出してお客様に伝えます。
自分で口に出すことでPOSの打ち間違いに気付いたり、お客様からの指摘で気付けることがあります。
金額確認
金額表示器があればそれを見ていただきます。お客様はお買い物で予算をお持ちなので頭の中で「大体これくらい金額」という認識をお持ちです。
著しく金額に相違がある時はレジミスの可能性がありここで気付くことできます。
(例:上記のPOS画面の事例で言えば、
「ユニセックスのスウェット1点、ニットキャップ2点で・・・」と仮にバーコードを重複して読み込んでいても、お客様から「ニットキャップは1点しか買っていませんよ」と気付いていただけるケースがあります。
私もこういった形で過去にお客様からの指摘で気づいた事例があり今でも大切にしています)
値引き確認
割引対象になるポイントカードや金券の有無をお伺いします。後でお伺いしてポイント値引き等の金額を修正する場合、ミスが起こりやすいので必ずこのタイミングでお伺いします。
値引き入力
ポイント割引や金券がある場合は先にPOSに金額を入力します。クレジットカード端末に入力する金額を決定するために、先に値引きに繋がるものを入力しましょう。
金額の入力
カードお預かり
クレジットカードをお預かりし、お支払回数をお伺いします。
端末によっては後に支払回数の選択をするものもありますが、先にお伺いしましょう。クレジットカードは1回払いが圧倒的に多く、複数回払いを指定される方の方が稀なので、ここで先に伺うことで仮に複数回払いを指定されても慌てなくなります。
端末操作開始
クレジットカード端末の操作を開始します。
金額入力
POSの「不足金額」と同じ金額を、クレジットカード端末に入力します。
この「不足金額」を見ながら、金額を合わせていくことが重要です。クレジットカードの金額を打ち直すことがリスクに繋がりますので、この不足金額とレジ端末の金額を一致させることに全神経を集中させます。
金額確認
自社ブランドのPOS端末の不足金額と、クレジットカード端末の金額が一致していることを指差し確認します。
この時に、指差し確認をしましょう。指差し確認は客観的に自分の仕事を振り返ることができます。
支払の実行
支払回数入力
クレジットカード端末を操作し、支払回数を入力します。
暗証番号の入力
お客様に暗証番号の入力を促します
カードお返し
クレジットカード端末からカードを抜き取り、お客様にお返しします。
レシートの発行
レシート確認
クレジットカード端末から出てきた、「カード会社控用」「お客様控用」「加盟店控用」をカルトンに乗せてドロワーの前に移動します。
必ず、「ドロワーの前」に場所を変えて、集中できる場所で確認します。
画像で言えば、お客様とは対面でお金のやり取りをやりますが、図のようにキャッシャーの死角に隠れるなどして、レシートをチェックする環境を作ります
加盟店控えの格納
「カード会社控用」「加盟店控用」をドロワーの所定の場所に格納し、「お客様控用」をカルトンに乗せます。
ドロワーに「カード会社控用」「加盟店控用」が格納されれば、残りは「お客様控用」になります。
この「所定の場所に格納」をここで行うのがポイントです。ドロワーに「カード会社控用」「加盟店控用」が格納されれば、残りは「お客様控用」になります。
お客様に「お客様控用」を渡す というマニュアルに留めるのはマニュアルとしては不完全です。
「カード会社控用」「加盟店控用」が正しくそろえば残りが「お客様控用」になるというロジックを使います。
最近の傾向では、カード会社へ電送計上されるため「カード会社控用」が出ない端末もあります。また「カード会社控用」をお客様にお渡しすると月末事務が煩雑になりますので注意しましょう。
レシート発行
POS端末の「チェックアウト」を操作しレシートを印字します。
便宜的にスマレジの用語を使用しています。(「会計する」という表示のPOS端末を見たことあります。)
レシートを自分で確認
レシートとクレジットカード端末から出た「お客様控用」の金額の一致を確認します。
なおこの確認でミスに気付けることがあるので、この工程をおろそかにしないようにします。
画像の事例であれば、POSレシートの20,845円とクレジットカードの「お客様控」の20,845円が一致していることを確認します。
レシートお渡し
お渡し準備
カルトンの上に、発行されたレシートとお釣りを置きます。
バラバラにお渡しすることがお渡し忘れのリスクになるので、必ずお返しする物を揃えてからカルトンの上に置きましょう。
読み合わせ準備
お客様の前にカルトンを出し、レシートの読み合わせ準備をする。
読み合わせ実施
レシートの内容をお客様と確認し、クレジットカードの支払い金額・支払方法が一致していることを声に出してお客様にお伝えします。
「商品名①●円、商品名②●円、合計●点で合計金額●円をクレジットカード一括払いで承りました」
この読み合わせをおろそかにしないようにしましょう。特に合計点数と合計金額の確認をお客様と行うことで、お買い物の内容を相互に確認することに意味があります。
レシートお渡し
カルトンの上のものをお返しします
カルトンをしまう
カルトンを片付けて、レジ台の上に何も残っていない状態にします。この工程もお渡し漏れを防ぐ意味でも大切です。
マニュアルに記載されたミスのパターンと注意点の内容
上記のマニュアルの右側に、「ミスのパターン」と「注意点」という項目があります。
私が過去にレジを行う中で経験した「ミスのパターン」に対して、「注意点」はどのようなことを注意するとミスが減らせるのか?を記載しています。
その際に、関連するエピソードを記載し、スタッフがレジを行う際に少しでもマニュアルの業務手順が定着するようにしています。
これは、エピソード記憶と呼ばれる手法で、「時間や場所、感情など、具体的な情報と結び付けたほうが効率的に記憶できる」という根拠に基づいています。
例えば、織田信長は桶狭間の戦いで今川義元を奇襲で討ち、天下統一への足掛かりを掴んだというエピソードは有名です。
このエピソードを覚えることで、信長の戦略や戦術を理解しやすくなり、単に生没年や功績を暗記するよりも、その人物がどのような人生を送ったのを思い出しやすくなります。
注意点の説明は一つ一つはやや長くなりますが、私が現場でレジを教える際はこのやり方で説明し、スタッフさんの知識の定着を図っています。
なお、エピソード記憶の反対は、意味記憶と呼ばれます。知識や概念として抽象的な情報として記憶されることで、丸暗記が意味記憶に該当します。
指差し確認
指差し確認の重要性を考えるとき、私は以下のエピソードを思い出します。
海外から来た友人の娘が、駅員が指差し確認をしている様子を見て、
1998年に出版された糸井重里氏のエッセイ「指さし確認」より
「パパ見て!この駅員さん、電車を操縦しているよ!」と驚いていた。
指差し確認は日本の鉄道業界で広く採用されている安全確認の方法です。
駅員や運転士が手順や安全確認項目を指で指し示しながら確認することで、注意力を高め、ミスを減らす効果があるとされています。
我々、販売員たちもお客様からお金をいただく重要業務でも同様の注意を払うべきと考え、この指差し確認をレジマニュアルに入れています。
ゾロ目やミラーナンバーへの注意
過去に私が見たミスで印象的だったのが、「7,700円」のお会計を「7,770円」で打ち込んでしまったり、「50,500円」を「50,050円」と見間違えて入力してしまったパターンです。
連続するナンバーはゾロ目、真ん中で分けると鏡写しになる番号の羅列をミラーナンバーというようです。
ゾロ目やミラーナンバーなどの特定の数字のパターンが注意力を散漫にさせる可能性があるのは、人間の脳がパターンや意味を認識しようとする本能的な働きによるものです。こうした数字の並びは、日常生活で目にする一般的な数字と異なるため、認知のプロセスにおいて「目新しさ」や「異質さ」として認識されます。人間の脳はパターンを見つけることに非常に優れており、環境の中から関連性のある情報を抽出しようとします。ミラーナンバーやゾロ目といった数列は、その独特な規則性が脳に強く訴えかけるため、一時的に集中力を削ぐ要因となる可能性があります。
だからこそ、指差し確認を行いますし、私はこれらの文字列が出た時は「7,700円」なら「ナナセン、ナナヒャクエン」ではなく「ナナ・ナナ・ゼロ・ゼロ」と復唱するようにしています。人間の脳がパターンを見つけようとするため、それを無効化して数字の羅列として認識をするためです。
口頭での提示
学生の頃、試験勉強の際に、記憶に残りやすくするために単語や用語を声に出して読んだ人もいるでしょう。
情報を声に出して読むことで、聴覚的な情報を得ることができ、記憶の定着が促進される効果があります。
聴覚的な情報は、視覚的な情報とは異なる視点を与えてくれるため、間違いに気づけることがありこのレジマニュアルに入れています。
お客様との相互確認
例えばデータ入力も一人で行うデータ入力は、誤入力が発生しやすいですが2名で相互チェックを行うことで、誤入力を減らすことができます。
お客様はお買い物で予算をお持ちなので頭の中で「大体これくらい金額」と計算しています。
お客様に委ねるわけではないのですが、ここで「●●は頼んでいませんよ」と
お客様からご指摘で気づけることもありますし、何より正確にお会計を承るためにもこのレジマニュアルにも入れています。
リスクに対して先手を打つ
早めに意思決定することで、リスクを回避できる事例で一番わかりやすいのは病気の早期発見です。
健康診断を先延ばしにすると、病気が発見が遅れてしまう可能性があります。また早めに健康診断を受診することで、早期発見・早期治療に繋げることができます。
このように、「支払い回数」「ボーナス払い」のように、支払い方法を先に知っておくことで準備や心構えが出来るので、私は先に支払い回数をお伺いすることを推奨するため
このレジマニュアルにも入れています。
変数をコントロールして不足金額を合わせる
「不足金額」とは、POSレジで出てくるいくらをクレジットカード端末に打ち込むべきか?を明確にしたものです。
便宜上、スマレジというPOSシステムの用語を引用していますが、同様の機能がPOSレジについているはずです。
例えば、あなたが友人とのピクニックに行く予定があるとします。
ピクニックに必要なものを考える際、天気予報、場所、友人の好み、持ち物などの要素が変数として挙げられます。
一方で、もし天気が雨であれば、予備の屋根のある場所を見つける必要があり、持ち物にかさが必要になったりします。
このように、考えるべき要素が多いと、どのように行動するかを決定するのが複雑がこれらの要素を減らすことができれば、
状況をよりシンプルに理解し、行動することができます。
レジも、この事例のように先に変数になるものをコントロールしましょう。
クレジットカード端末に金額を打ち込むのであれば、ポイント数や金券の枚数が変数になります。
これらの変数をコントロールして、不足金額の金額を合わせていく方法でレジを打っていきます。
任意の順番でレジを打つことは、クレジットカードの金額を打ち間違えるリスクに繋がるのでやめましょう。
集中できる環境
お客様の目の前でレシートを確認せず、わざわざ場所を移動する意図は試験勉強を図書館でやる意図と同じです
図書館のように、知り合いがいない場所で勉強することで、外部の刺激や気配を感じることなく、目の前の課題に集中できる感覚はお分かりだと思います。
特に、図書館はカフェに比べて他の人の視線を気にせずに自分のペースで作業できるため、集中力を高める効果があります。
これと同じ効果を狙って、お客様から離れた場所に半歩だけ移動して集中できる環境を整えてレシートのチェックをすることをお勧めます。
集中できる環境がなければ、キャッシャーの場所を変えるなどの措置をしたほうが良いですし、それだけの投資効果は見込めるでしょう。
(上記の模式図で言えば、お客様とは対面でお金のやり取りをやりますが、図のようにキャッシャーの死角に隠れるなどして、レシートをチェックする環境を作ります)
レシートを読むことで客観視できる
プリントアウトすると客観視できるという感覚は科学的に裏付けられています。
1984年にアメリカでこんな実験があったようです。
参加者に電子機器の操作方法を説明するテキストを読んでもらい、その後の操作テストの結果を比較した。
「デバイス操作学習におけるメンタルモデルの役割」 著者:David E. Kieras, Susan Bovair 掲載誌: Cognitive Science, 8(3), 255-283
その結果、テキストをプリントアウトして読んだ参加者の方が、画面で読んだ参加者よりも操作テストの成績が良かった。
自分の行った業務を客観的に振り返るのは、「自分は間違えるはずがない」という過信があると難しいものです。
だからこそプリントアウトされたレシートを自分でチェックすることをレジのマニュアルに入れています。
耳を揃える
私がここで意識して欲しいと思っているのが「耳を揃える」という表現です。
「耳を揃える」の「耳」は、小判や貨幣の縁(へり)のことを指し、古くは金貨や銀貨の周囲を整えることを意味していました。
つまり、貨幣の縁を揃えて整えることから、「物事をきちんと整える」「準備を整える」という意味で用いられるようになったのです。
これは江戸時代の話のようですが、現代でもこれを応用しましょう。
そもそも、バラバラに返すから渡し忘れが起きるのです。全部揃った状態=耳を揃えて渡す ということを意識するためにこのマニュアルに入れています。
一緒に声に出して読む
復唱することでミスを防ぐ方法は、特に安全性が重視される航空業界や医療分野で効果的に用いられています。
この方法は「読み上げ確認」とも呼ばれ、与えられた指示や重要な情報を再度口に出すことで、誤解やミスの可能性を減らします。
航空業界では、パイロットや管制官がこの手法を常用しています。例えば、管制官からの指示をパイロットが復唱することで、両者間の認識の齟齬を即座に解消し、飛行の安全性を高めています。
一方、医療分野では、手術室や緊急処置の際に医師や看護師が指示や情報を復唱します。これにより、薬剤の投与量の誤りや、患者情報の誤認など、重大なミスを未然に防ぐことができるのです。
これらの事例を応用し、レジでも必ず復唱するようにしましょう。お客様をレジミスから守ることは、パイロットが乗客を、お医者さんが患者を守ることと同じくらい重要であると心得て欲しく、このマニュアルに入れています。
忘れ物がないか振り返る
公共交通機関で忘れ物をしないためには、降車時に自分が座っていた場所を振り返って確認することが非常に有効です。
これは、「確認のための振り返り」とも呼ばれ、物を忘れるリスクを減らすための習慣と言われています。(私もこの方法で何度も忘れ物から救われいます)
認知心理学において、人間の注意と記憶は限られたリソースであり、同時に多くのことに集中することは難しいとされています。
公共交通機関を利用する際には、目的地への移動、時刻表の確認、乗り換えなど、多くの情報を処理する必要があります。そのため、持ち物を管理することに対する注意が散漫になり、忘れ物をしてしまうと言われています。
レジの最終工程もこれと同じです。お釣りの渡し忘れがないか、ポイントカードのお渡し忘れがないか、カルトンの下にレシートが残っていないかを確認するためにもカルトンを所定の場所に戻してレジを終えるようにしましょう。
まとめ
今回は、レジミスを防ぐ上での重要な業務マニュアルの具体的な作成手順と、実際に現場で使っているマニュアルのテンプレートをご紹介しました。
次回はクレジットカードではなく、現金を扱った場合の注意点を中心に、業務マニュアル作成のポイントをご紹介します。