【焦りはどこから?】レジミスをしないための知識とレジで焦らないコツ5選 - アップ店舗

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【焦りはどこから?】レジミスをしないための知識とレジで焦らないコツ5選

いつも店舗でのお仕事お疲れ様です。

レジミスをしないためにどんなことに気をつけばいいか?でお悩みではありませんか?

私はこのブログでレジのマニュアルの重要性をお伝えしてきましたが、レジのスキル以外で知っておいた方が良い知識があることに気付きました。また、自分もこの記事に書いた気持ちの変化でレジ業務での焦りが極端に減りました。

この記事では、店舗で焦る主な原因である「お客様をお待たせしてしまう」というのは、販売スタッフ側の思い過ごしである可能性について記載しています。また、焦りのメカニズムや焦らないための技術をコツとして5つ紹介しています。

この記事を読むと、レジの何に不安を感じているのかを知ることができます。

レジ業務での焦りを解消した結果レジミスが減り、店舗で一番大切なお客様との時間を増やせることを期待しています。

焦りのメカニズムを知る

焦りは、判断力や注意力の低下を引き起こし、ミスを増加させる原因になります。レジミスが発生するシチュエーションを思い返すと、スタッフさんが焦っている、もしくはパニック状態に陥っている状況が多いです。

人はなぜ焦るのでしょうか。まずは、焦りがミスを生む理由を脳のメカニズムを知りましょう。

焦りは脳がストレスを感じている状態

焦りは一種のストレス反応であり、脳が通常よりも迅速に行動しようとするため、注意力が分散しやすくなります。脳の前頭前野の機能が抑制され、集中力が欠けるため、通常では発生しないようなミスが生じやすくなります。

参考になるのは東邦大学の神経科学研究室『ストレスと脳』のサイトです。

最近、ストレスは霊長類で最も発達している大脳皮質前頭前野(前頭前野:図1)にも影響を及ぼし、高度な精神機能を奪ってしまうことが分かってきました。ストレスは、感情や衝動を抑制している前頭前野の支配力を弱めるため、視床下部などの進化的に古い脳領域の支配が強まった状態になり、不安を感じたり、普段は抑え込んでいる衝動に負けたりするというのです。

『ストレスと脳』東邦大学 神経科学研究室 増尾好則氏 
ユーザー目線

なるほど、焦りはストレス状態を生み、脳に悪い影響を与えているんですね。

レジミスの他にも焦りがミスを起こす事例を挙げてみます。

焦ってミスする事例①寝坊して交通事故

マイカー通勤をしている人が、寝坊していつもより遅れて自宅を出発したとします。

いつもなら安全運転で向かう道路を、今日は追い越し車線を使って少しでも早く車を進めようとします。その結果、いつもより早いタイミングで車線変更を試み、結果として交通事故となりました。

焦って車を運転を運転してミスに繋がる事例

焦ってミスする事例②商談で忘れ物

ある重要な商談を控えています。

取引先へのプレゼンテーションの資料を作成していましたが、準備の段階で時間がないと感じたとします。その焦りから重要なデータのチェックを怠ったり、相手先に配布する資料を持ち忘れるなどのミスが発生するかもしれません。

焦ってプレゼン資料を作ってミスをする

いずれも焦りから生じるミスであり、目新しいものではありません。

つまり焦りは、注意力の散漫や判断ミスを引き起こしやすく、これがミスを誘発する主な理由です。

まずは「焦っていると誰でもミスをする」を認識しましょう。 さらにいえば「レジで焦っている瞬間はミスの確率が高まっている」と肝に銘じましょう。

焦りの原因を取り除く

ここからは焦りの原因を考え、その原因を取り除けるよう私の体験談を含めて紹介していきます。

焦りの原因は「お待たせしてしまう」という恐怖心

  • 「レジでもたもたするとお客様をお待たせしてしまう」
  • 「レジに次のお客様がお待ちなので、早く次のお会計に移らなくては」

こういった焦りを抱えてレジミスをしてしまう事例を、私自身も経験し、また多くのスタッフが同じようにミスをしてしまうことを何度も見てきました。 私もこの焦りに何度も直面してきました。

男性マネージャーがレジミスで悩んでいる

「お客様をお待たせする」は、スタッフ側の思い過ごし

ここからは、「お待たせしてしまう」という恐怖心について考えてみます。

お客様は本当にお待ちなんでしょうか?そんなに急いでいるのでしょうか?

私はある時、「本当にお客様をお待たせしているのだろうか?」ということを突き詰めて考え、その結果、焦る気持ちをコントロールできるようになりました。

結論を言えば、販売スタッフはレジでの待ち時間に敏感であるが、お客様はその待ち時間をそれほど気にしていない場合が多いです。

これは、心理学の世界では「時間知覚」という言葉で紹介されています。物理的な時間の長さよりも長く感じたり短く感じたりすることがあります。

楽しい時間はあっという間に過ぎるのに,退屈な時間はなかなか過ぎない。このように感じた経験は誰もがもっていることでしょう。この感覚を引き起こしている主な要因は時間経過に対して向けられる注意であると考えられています。時間の経過に注意が向けられる頻度が高いほど時間がより長く感じられるのです。逆に,時間の経過に注意が向けられる頻度が低い場合や,時間の経過以外の事柄に注意が向けられる場合には,時間は短く感じられます。

「なぜ時間を長く感じたり,短く感じたりするのですか?」 日本心理学会 一川誠氏 

これは、我々も日常の経験しています。例えば、好きな映画の時間は2時間があっという間に過ぎますが、テレビで退屈な国会中継を見ていると時間が全く進みません。

楽しい時間はあっという間に過ぎていく

この「時間知覚」で言えば、店内の雰囲気が良かったり、何かを見て楽しんでいる間は、実際に待っている時間よりも短く感じられると言えます。お客様がレジで少し待たされること自体は、それを快適または受け入れがたいものと感じさせる他の要因がない限り、大きな不満には繋がらないのです。

つまりお客様は「そんなに待っていない」状態で、スタッフだけが「お待たせしてしまっている」と感じているのです。

お店でのお買物体験が良ければ良いほど、「待ち時間」を意識することなく、レジでのお会計を行っていただけることに気付いてからは、私は「お待たせするのが嫌ならば、接客を頑張ってお客様にお店を楽しんでもらおう」と気持ちを切り替えることができました。

お客様が楽しそうにお買い物をしている

皆さんにも「お待たせしている」という焦りから脱却するために、レジでお会計をする前の状況である接客を頑張ることで、「お待たせしている」という焦りを持たないようになっていただきたいです。

焦らない技術を獲得する・焦らないためのコツ5選

以上のような認識を持ったうえで、焦る状況を事前に予防したり、焦りを感じた際には落ち着くための対策を講じることが、ミスを減らすために有効です。具体的に、焦らないための対策をコツとして5つ紹介します。

技術(1)焦らないための準備

レジに入ってから全てを行うため情報処理が多くなることを理解しましょう。対策としては、レジに入る前の時間を有効に使うということです。スーパーのようにレジで列が出来ている状況でなければ、事前に出来ることを終わらせておくのが有効です。

具体的なお会計前のご案内①

(商品がご成約になった直後)

「ではお会計の準備してまいります。ぜひこちらで別の商品をご覧になりながらお待ちください」

(先に、自分だけがレジに行き、商品のタグを読み込み2度確認)

「お待たせしました。お会計の準備が整いましたのでご案内します。」

先に準備しておく

このように先にお会計の準備をしておくことで、あとはPOSレジを操作するだけの状態でレジに臨みます。

次に紹介するのは、レジ前で様々なご案内を完結しておく方法です。

具体的なお会計前のご案内②

(レジの外でチラシをお客様にお見せしながら)

「お客様は当店の〇〇というサービスはご存知ですか?」

(LINEの登録用のQRコードをお見せしながら)

「会員登録すると○○というサービスが受けられます」

チラシを使って事前にご案内しておく

このようにレジに入らなくても出来ることは先に終えておくことが重要です。

なお、お会計前のご案内②で「え?LINEのコードってどうやって読むの?」みたいな質問が始まり、その対応で右往左往している間に、焦りが増してレジミスというパターンも過去に私は何度も目にしてきました。

技術(2)回避パターンを決めておく

自身が焦った経験、もしくはヒヤリとした経験から、そのパターンが表れたら回避することを決めておくのも一つの手段です。

例えば、以前に私の友人がお店に遊びに来てくれて「たんぱクンのいるお店だからこれ買っていくよ」とたくさんのお買物をしてくれたことがありました。その時は有頂天になり、いつもと違う手順でレジを行い、レジミスをしたことがあります。私の場合は「身内や友人が来ると、いつもより自分を誇張したくなるため気持ちに焦りが出る」という傾向値があることに気づきました。

友人が来ると焦るという自分の癖を認識している

それ以降、同じシチュエーションが発生したときは、私はお包み(商品の梱包作業)を行う側に回り、同じお店にいる別のスタッフにレジを変わってもらうようにしています。 後で知ったのですが、これは「回避行動」といってリスクマネジメントでは使われるフレームワークでした。

リスクマネジメントでは、一般的に、プロジェクトマネジメントの観点で「PMBOK」の考え方があり、それを例にとります。
それには、「回避」・「転嫁」・「軽減」・「受容」の4つが存在しています。
「回避」とは、リスクの発生を退ける対策のことです。対応例としては、「取引先の業績が不振のため、新規注文をしない」といったことです。

『リスクマネジメント(リスク管理)の目的と導入する際に必要な考え方』 NTT HumanEX 

自身が焦るパターンが分かっているのであれば、あえてその分野で戦う必要はありません。早々に回避行動を行い、お客様にご迷惑をお掛けしないようにコントロールしましょう。

技術(3)リカバリー方法を決めておく

気持ちが焦った時、事前に決めた行動を行うことで落ち着きを取り戻すのに役立ちます。

私の場合「水を飲む」を事前に決めています。実際に焦っていると自分で分かった時は、バックヤードに下がって水を飲みます。

水を飲みにバックヤードに下がる時のトーク

(レジの途中で、自分が焦っていることに気付いた場合)

「確認事項がございますので少々お待ちください。」

(お客様にお伝えして、水を飲んでレジに戻る)

「お待たせしました。レジを再開します」

バックヤードで水を飲む

このようにお伝えしてレジを行うことが時々あります。

ここだけ切り取ると、大した用事もないのにバックヤードに下がるのは失礼に見えるかもしれませんが、レジミスをしてお客様にご迷惑をお掛けする方がもっと失礼だと思っています。

事前に定めた行動には、心理学では「アンカー」というようです。「水を飲めば大丈夫」という事前に決めた単純な行動は自己暗示の役割があり、一種の精神的な安定剤として働きます。習慣的な行動を通じて落ち着きを取り戻し、集中力を再び向上させる手助けとなっているようです。

技術(4)深呼吸する

一般的な技術ですが、焦りを感じた際には、深呼吸をすることが効果的です。

深呼吸は、副交感神経を刺激し、心拍数と血圧を低下させることでリラックス効果をもたらします。これにより、ストレス反応の一部である「焦っている」の状態を和らげ、冷静で集中力のある心理状態を取り戻すことができます。

例えば、スポーツ選手が大切な試合の前や緊張する場面で深呼吸をするのは、このリラックス効果を得るためです。また、公演前の俳優が舞台袖で深呼吸をして落ち着かせるのも、同じ理由からです。

レジの前で深呼吸をしている画像

焦った気持ちを落ち着かせ、集中力を取り戻すためには、深呼吸が有効な手段となります。

技術(5)トレーニングで克服する

最後に紹介するのはトレーニングで焦りを減らすという方法です。

私がこのブログでマニュアルの紹介をしている理由も、マニュアルを作り反復してレジの練習をすることが、レジミスを防止する最善策だと考えているからです。

レジミスを防ぐためには、十分な事前トレーニングが非常に有益です。 トレーニングによって、レジ打ちのスキルや自身の焦りの原因を把握でき、それにより自信が生まれます。自信を持っていると、焦りや不安が軽減され、集中力が維持されます。これにより、ミスが起こる可能性が減少します。

レジの練習をしている画像

トレーニングは、実際の作業環境での緊急事態や予期せぬ状況に対処する能力を向上させます。繰り返しの練習を通じて、作業手順を自動化し、より少ない認知リソースでタスクを遂行できるようになります。

レジミスをしてしまったら落ち込んでいないでやること

どんなに気を付けていても、ミスは起こってしまいます。レジミスが起こってしまった場合は以下を参考にしてください。

バレるバレないを気にされる方がいますが、報告しましょう。(基本的にバレます)

レジミスを報告すべき4つの理由

  • お客様のため
  • チームのため
  • 会社のため
  • 自分のため

具体的な内容は「レジミスを報告すべき4つの理由」をご参照ください。

また、どうやって報告すべきか悩む方のポイントは以下の3つです、

具体的な報告方法のコツ3選

  • 事実を三現主義で整理する
  • 報告のタイミングは「できるだけ早く」を意識
  • 正直かつ謙虚な態度を心がける

詳細は、「具体的な報告方法のコツ3選」をご参照ください。

なお、レジミスをして落ち込んでしまう気持ちもわかりますが、以下の業務を行うことで信頼回復の可能性があります。

報告後の対応の注意点は4つ

  • お客様対応を率先してやる
  • 商業施設への報告を行いやすくする
  • 本社への報告は手伝う
  • 再発防止策を提案・発信する

詳細は「報告後の対応の注意点は4つ」にまとめていますのでご参照ください。

レジミスを起こしてしまい、落ち込んでいる人は以下の立ち直りの方法を参考にして、早く仕事に復帰しましょう。

レジミスで落ち込んだ時の立ち直り方17選

まとめ

私が新人の頃、先輩から教えてもらった言葉に「ミス一つ、苦労二倍、損三倍」という言葉があります。

これは、ミスを1つすると、お客様への対応で何倍もの労力を要するという格言のようです。

「お客様をお待たせしてしまう」という恐怖心に駆られてミスをして、あとで何倍もお客様にご迷惑をお掛けするくらいなら、ミスをしないために少しの時間をお待ちいただくのも、結果的にお客様の満足をあげることにも繋がります。

レジミスが減り、少しでもお客様と向き合う時間が増えることを祈っています。

  • この記事を書いた人

たんぱくん

レジミスや万引き・盗難は小売り現場の社会的な損失と考えブログを執筆中。 2012年保険代理店を経営➡2015年大学院を卒業➡小売業界に転職➡2018年 店舗のマネージャーに就任➡2店舗の新店オープンに従事。 経営管理修士(MBA)修了。

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