【受理される?されない?】被害届が活用され、犯人が逮捕された話 - アップ店舗

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【受理される?されない?】被害届が活用され、犯人が逮捕された話

被害届を出すのは時間の無駄と思っている店舗マネージャーもいるのではないでしょうか。特に被害届の受理されないケースがあると、なおさらやる気が出ないと思います。

そもそも、被害届が受理されるケースと受理されないケースの違いが何かを整理する必要があります。

私は、アパレルブランドで5年以上の店舗マネージャーの経験がありますが、15回以上万引き・盗難の被害に遭い、うち14件で被害届を提出してきました。

この記事では、被害届の提出の結果、受理されたケースとされなかったケースを紹介します。また被害届の提出の結果、犯人が逮捕されたケースもありましたので実体験をもとに紹介しています。

この記事を読むと、被害届を出す出すべきか出さないべきかを事前に頭の中でシミュレーションできます。そもそも、被害届を出す出さないで悩む時間が短縮されれば、我々店舗マネージャーにとって最も大切な店舗の運営の時間を作ることが出来ます。

こちらの記事を参考にしていただき、皆さんが少しでもお客様をお迎えする環境作りに専念できれば幸いです。

被害届の提出の概要

被害届とは、警察に犯罪の発生を報告する書類

被害届は、犯罪の被害者が警察に正式に犯罪の発生を報告する手段です。これにより、警察は正式な捜査を開始し、犯罪者を特定し、法のもとに処罰するための第一歩となります。被害届の提出は、単に事件を記録するだけでなく、公的な統計にも影響を及ぼし、犯罪防止策の策定や公共の安全の向上に役立つ情報を提供します。

店舗マネージャーにとって、万引き・盗難は避けては通れない犯罪です。被害届の提出方法を知っておくと、被害届提出に関する時間を短縮でき、本業であるお客様をお迎えすることに時間を割くことが出来ます。

被害届の様式を確認する

このブログで説明している被害届は、犯罪捜査規範に記載された「様式第6号」の文書を指します。

被害届様式第6号

(被害届の受理)

第61条 警察官は、犯罪による被害の届出をする者があつたときは、その届出に係る事件が管轄区域の事件であるかどうかを問わず、これを受理しなければならない。

2 前項の届出が口頭によるものであるときは、被害届(別記様式第6号)に記入を求め又は警察官が代書するものとする。この場合において、参考人供述調書を作成したときは、被害届の作成を省略することができる。

引用元:e-Gov法令検索 昭和三十二年国家公安委員会規則第二号犯罪捜査規範

被害届の項目を確認する

公開されている別紙様式の項目を抜粋すると以下のようになります。

  • 届け出日
  • 届出人の住所・氏名・電話番号
  • 被害者の住居・職業・氏名・年齢
  • 被害の年月日時
  • 被害の場所
  • 被害の模様及び目撃状況等
  • 被害品
  • 被害確認状況及び被害品の措置
  • 犯人の住所、氏名、又は通称、人相、着衣、特徴等
  • 遺留品その他参考となる情報

被害届は受理されないケースを確認する

店舗マネージャーが被害届の提出を躊躇する原因として、果たして被害届が受理されるのか?という心配があるようです

被害届の受理に関連する法律を再度見てみましょう。

(被害届の受理)

第61条 警察官は、犯罪による被害の届出をする者があつたときは、その届出に係る事件が管轄区域の事件であるかどうかを問わず、これを受理しなければならない。

引用元:e-Gov法令検索 昭和三十二年国家公安委員会規則第二号犯罪捜査規範

ポイントは「犯罪による」被害の届出が必要で、犯罪に当たらないケースの場合は受理されないようです。

なお、万引き・盗難に関しては明確に犯罪と言えますので、適切な手順で作成した被害届は受理していただけます。

詳細は 【体験談】10回以上警察に行って分かった、万引き・盗難の被害届の出し方 をご覧ください。

被害届が受理されない主なケースとして、犯罪に当たらない事例がいくつか考えられます。以下にそのような事例を3つ挙げて説明します。

  • 民事紛争
  • 個人的な意見の相違
  • 誤解や誤認

民事紛争

契約違反や借金の返済問題など、個人間の契約に関連するトラブルは犯罪ではなく民事紛争として扱われます。たとえば、貸したお金が返ってこない場合、これは詐欺ではなく、契約の不履行に関する問題と見なされ、警察ではなく民事裁判を通じて解決を図るべき問題です。

契約違反や借金の返済問題

個人的な意見の相違

隣人間の騒音問題や意見の不一致など、法律に違反していない範囲での個人的な意見の対立も犯罪ではありません。このような場合、警察ではなく、マンションの管理人のような仲介者を通じて話し合いで解決を試みるのが適切です。

隣人間の騒音問題

誤解や誤認

他人の行動を誤って犯罪だと誤解することがあります。例えば、自分の物と似た外見の傘が無くなったとしても、それを誰かが盗んだとは限らず、誤って持ち去られた可能性があります。この場合、明確な証拠がない限り、犯罪として扱われることはありません。

自分の物と似た外見の傘が無くなった

被害届の行方(14件の届け出結果)

ここからは自身が経験した被害届を提出した14件のケースを紹介していきます。

  • 被害届が受理されたが、犯人が捕まらなかったケース:12件
  • 被害届が受理され犯人が捕まったケース:1件
  • 被害届が受理されなかったケース:1件
  • 被害届を提出しなかったケース:多数

図でまとめると以下のような内訳になります。

過去の被害届の提出の概要

被害届が受理されたが、犯人が捕まらなかったケース(12件)

犯人が捕まらなかったケース

時間を取って被害届を作成してきましたが、圧倒的にこのケースが多いです。

万引き・窃盗の現場が、防犯カメラの映像で犯行が撮影されていても、犯人の身元が特定できない場合があります。犯人の顔がわかったとしても、個人情報が特定できない場合、犯人の特定が難しくなります。

防犯カメラ 犯人の身元が特定できない場合

他にも、マスクを着用している、顔を隠しているというケースだと警察は動けないようです。

当たり前と言えば当たり前ですが、この辺りの労力に対する効果が見えるずらいことが徒労感に繋がり、店舗マネージャーは被害届を出さない傾向があるようです。

被害届が受理され、犯人が捕まったケース(1件)

犯人が捕まったケース

過去に一度だけ、犯人が捕まったケースがありました。個人情報を伏せる関係で若干の省略は行っているものの、実際にあった事例を紹介します。

犯人が捕まった万引きのケース

・夕方にお客様が1名でご来店。

・その方は試着を繰り返したが、スタッフが商品を取りに行ったり、会計の準備をしている間にお洋服周りのアクセサリーを自身のカバンの中に入れる。その様子が防犯カメラに記録される。

・その後、試着をしていた洋服をクレジットカードで購入して退店されたが、アクセサリー2点に関してはお会計をしなかった。

お会計なしで退店

・閉店時にスタッフがアクセサリー類がなくなっていることに気付く。私が防犯カメラを確認し、万引き・盗難を認識。

・警察に被害届を提出。その後、刑事さんが来店され、クレジットカードの加盟店控えを提出。

・刑事さんが、クレジットカード会社に照会(クレジットカード会社は住所・氏名等の個人情報を持っている)。

・クレジットカード会社に問い合わせし、クレジットカード情報をもとに犯人を特定。

・事件発生から約半年後に、家宅捜索や事情聴取が行われ、本人が窃盗を認めた。

事情聴取

以上のように、被害届が捜査のきっかけとなり犯人が捕まったケースがありました。なお、先方の弁護士から連絡をもらい示談を希望されました。私も、本社と連絡をとり、顧問弁護士に対応を任せ、最終的には盗難した商品分の金額を支払っていただくという形で示談を行った記憶があります。示談は成立したもののなんとも後味の悪い結果となりました。

なお、警視庁が公表している「令和3年の刑法犯に関する統計資料」によると、万引きの検挙率は令和3年で73.6%で比較的高い傾向となっています。私の出した被害届もこの中にカウントされ検挙率を押し上げる結果となっています。

「令和3年の刑法犯に関する統計資料」の万引き認知・検挙状況

(出典:「令和3年の刑法犯に関する統計資料」P50ページの図を引用)

被害届が受理されなかったケース(1件)

犯人が現場に舞い戻ったもののあと一歩のところで取り逃がしたケースです。

被害届が受理されなかった

個人的にはこのケースが非常に思い出深いです。

被害届が受理されなかった万引きのケース

・その日は天気も良く、多くのお客様がご来店

・お昼過ぎにアクセサリーの棚から数点の商品がなくなっていることに気付く。防犯カメラを確認したところ、女性が万引きしている画像が記録されていた

アクセサリーを万引き

・スタッフにお店を任せ、商業施設の警備員に報告。

・夕方になり、警察に行く準備をしていると、防犯カメラで見た女性と同じ服装をした女性がお店の前を歩いていることを発見。

・私がその人物に気付き、商業施設の警備員に通報。警備員が来る前に、私のお店を通過し、隣にあるスーパーマーケットに入店するのを確認した。

スーパーマーケットに入店

・商業施設の警備員と一緒にその女性を追跡。途中まで確認できていたが、途中で見失う(後で知りましたが、入り口の警備員に気付き逃走を図ったようです)。

・その後スーパーの中を探すも別の出入り口から退店されたのか結局、捕捉できず。ただタグの付いたままの不審なバッグが残っており、警備員に伝えて警備員が押収。

・そのバッグの中から、私のブランドのアクセサリー、同じ商業施設にある雑貨屋の雑貨、他のアパレルブランドの服がタグのついた状態で見つかる。全てその商業施設で盗んだものを詰まったエコバッグだった。(なおエコバッグも同じ商業施設にあるバッグで万引きしたものだった)

・いつも通り、交番を訪問。被害届を作成し提出。しかしながら、警察には「被害品が全店戻ってきており、被害が発生していない状況なので被害届を提出する要件には当たらない」とのコメントをもらう。

被害届の提出も受理されず

・被害届の提出と同じだけの時間をかけ、下書きのメモまで作成が終わっていたものの、今回は被害届を出さないことで合意した。

被害届を提出しなかったケース(多数)

盗難の発生が確定できなかったケースと、時間に追われて提出できなかったケースが私の場合挙げられます。

確定できなかったケースは、防犯カメラの給電が出来ておらず、万引きの現場を録画できなかったケースです。万引きなのか、店内での紛失なのか判断が出来ず、被害届の提出が出来ませんでした。

(詳細は【体験談】防犯カメラを4台買い替えをした私が語る、店舗向け防犯カメラの選び方の記事に記載しています)

提出できなかったケースは、私が新人マネージャーの頃、どうやって提出するのか調べる余裕がなくそのままなし崩し的に時間が経過してしまったケースです。なお、この時の経験があり、被害届の届出に必要なものを記載したブログを作るきっかけとなりました。

まとめ

今回は、被害届の提出を行った14件の事例のうち、受理されたものの犯人が捕まらなかったケース12件、犯人が捕まったケース1件、被害届が受理されなかったケースを1件ご紹介させていただきました。

被害届の出し方は、【体験談】10回以上警察に行って分かった、万引き・盗難の被害届の出し方 に記載しました。

皆さんの、被害届を出す出さないで悩む時間が短縮され、少しでもお店に集中できる時間が増えれば嬉しいです。

  • この記事を書いた人

たんぱくん

レジミスや万引き・盗難は小売り現場の社会的な損失と考えブログを執筆中。 2012年保険代理店を経営➡2015年大学院を卒業➡小売業界に転職➡2018年 店舗のマネージャーに就任➡2店舗の新店オープンに従事。 経営管理修士(MBA)修了。

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